株式会社スマートグラフィックス(ウエマツグループ)

ラクスルとの提携で着実な改善が加速、受託製造のプロとして高効率の生産体制を

仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる

東京都豊島区に本社を、主力の印刷工場を埼玉県戸田市に置き、「印刷業界のファウンドリ」を称して活躍する株式会社ウエマツ。

ファウンドリは、主に半導体産業において用いられてきた言葉で、受託製造に特化した専門企業を指します。ウエマツさんは2003年頃から、そのビジネスモデルを印刷業界にも応用し、改革を進行してこられました。現在は主要な印刷会社に印刷製造サービスを提供し、業績も好調です。グループ連結では40億円の売上規模を築いています。
ウエマツのグループ企業である株式会社スマートグラフィックスが、ラクスルのパートナーとなったのは2019年12月。本社工場の2階部分にラクスル専用の製造ラインを設け、日々の改善を重ねながら生産性を高めています。「ラクスルと私たちはベストマッチングのペアだと思った」と話すのは、同社の福田浩志代表取締役社長。

同社の福田佳祐 企画室長と、金子純 生産管理本部長と共に、ラクスルとの提携の経緯をはじめ、今後の展望について伺いました。


「工業製品的」印刷物を受注できる営業力に魅力

──初めて当社に出会った時は、どういったイメージを持たれていましたか?

福田浩志さま(以下、福田(浩)):ラクスルの松本さん(当社代表取締役社長CEO)と初めて会ったのは、2010年のことなんです。ある印刷関連の講演会のあとで、松本さんから「印刷通販の価格比較サイトを立ち上げる」とお話を聞き、面白いことを言う人だなぁ、と思って。その後で、私たちの工場も見学しにいらっしゃいました。

これまでは、ラクスルの仕事を受け入れられる体制がないといった理由で協業していなかったのですが、2019年の10月にスマートグラフィックスの前身であるマコト印刷の新工場が稼働。ようやく環境としても整ってきたため、関係を進展させていきました。

──どのような期待から関係を進展させていったのでしょうか?

福田(浩):私たち経営メンバーは、海外の印刷会社をよく視察するのですが、いかに日本の生産現場が遅れているのかがわかります。海外では印刷をひとつの工業製品として位置づけ、効率的な生産を考える工場が多い。当社も同様の製造体制を敷いていますが、課題はそういった工業製品的な印刷を求めているお客さまと出会える機会が少ないことでした。主軸は印刷会社のファウンドリですから、顧客もほぼ印刷会社だからです。
残念ながら私たちには、それを補えるだけの営業力がありません。だからこそ、営業機能をラクスルに担ってもらえているのは、まさにベストなマッチングなのだと思っています。

福田佳祐さま(以下、福田(佳)):私自身は2年前にこの業界へ入りましたが、ラクスルが手掛けていることは、世の中の流れにも合致し、かつ合理的だと思っていました。むしろ、既存の印刷業界には非合理な仕組みや、不合理な部分が多くあるままです。だからこそ、提携に際してもラクスルへの違和感はなかったですね。

金子純さま(以下、金子):私も同じく違和感はありませんでした。「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」がラクスルのビジョンですが、おっしゃるとおりだと。印刷はなかなか変わりにくい業界だと感じますが、確かに仕組みで変わっていけるはずです。

──提携後の仕事はスムーズに走り出せたのでしょうか。

福田(佳):納品までのスピードでいえば、私たちの既存業務とそれほどは変わりません。もともと24時間稼働の生産体制で、短納期にも応えてきましたから、特に支障なく業務は遂行できると思っていました。

福田(浩):確かに印刷だけなら、ラクスルの求めるスピードへの対応は容易でした。ただ、印刷後の裁断や折り加工、梱包、発送といった業務は、これまでにも経験がない部分。印刷後業務のボトルネックの解消には、まだ苦労がありますね。提携して、まだ数ヶ月経ったところですが、あと1年ほどかけてオペレーションを磨き上げれば、最も生産効率が良く、最もクレーム率の少ない会社の1つになれる自信はあります。私たちとしても挑戦したいビジネスのひとつでしたから。

具体的なアドバイスで「1歩分の作業」を着実に改善

──提携してどのような点で貴社の経営に貢献できているでしょうか?

福田(佳):ラクスルのみなさんは、私たちが少し驚くほどの頻度で、この戸田工場まで目黒本社からいらっしゃいます。多い時は週に2回ほどは来訪されるのではないでしょうか(笑)。生産現場についても、ラクスルからアドバイスをいただいています。ビデオカメラを持参して作業風景も記録され、翌週には生産効率を上げる方策を提案してくださいます。

そのアドバイスをもとに、毎日の作業量を細かく記録し、作業箇所にビデオカメラも設置することで、製造のボトルネックをあとから確認できるようにしています。どこで時間がかかっているのか、どこで作業の滞留が起きるのか……それらを少しずつ改善しているところです。濃密なサポートもあって、提携後の1週間や1カ月でも改善が見られていましたね。

金子:刷本や半製品の置き場所ひとつとっても、それが作業者から1歩で届くところと、2歩かかる場所では取り回しが変わります。それらの場所をはじめ、刷本を積む高さなどについてラクスルのみなさんから改善のアドバイスをいただき、確かめてみると確かに改善されるんです。

変わったのは「1歩分の作業量」かもしれませんが、それが365日積み重なると考えれば、効果は大きいものになりますから。

福田(佳):本当は、私たち自身で点検しなければならない部分だとは思いますが、自社で検討を進めるよりも、ラクスルと共に取り組むことで、何倍も早く効率的に実践できているように感じます。

──提携後、社内に変化はありましたか?

福田(佳):いま、私たちも仕事量を少しずつ増やしているところですが、現場社員が自発的に仕事の仕組みを変えるような姿も見られています。たとえば、ホワイトボードを設置して作業量を記載するのも、各自がだんだんと慣れてきて、自分たちで書く内容を工夫してみる。昼番と夜番の引き継ぎ事項を見直してみる。それら現場発信での改善策が表れてきたのは、良い変化だと思いますね。

福田(浩):私が社内によく言うことでもあるのですが、業界や世の中を変えられるのは「3つの者」しかいないのです。若者、よそ者、馬鹿者です。

私は入社前、証券会社に勤めていましたが、今では転身して15年が過ぎ、すっかりひとりの“印刷屋”になりました。社員たちは、私からすれば、まだまだ若者の世代も多い。ラクスルは印刷業界からすればよそ者ですし、もしかすると馬鹿者でもあるかもしれない(笑)。馬鹿者とは、枠組みに収まらないということですから。だからこそ、彼らが一緒に取り組むことには「変える力」が宿るのではないでしょうか。

印刷を工業製品化し、高い生産効率でビジネスを発展させる

──御社の経営において、これからの注力テーマは何ですか?

福田(浩):大きく二つの流れがあります。まず、私たちのビジネスモデルは、あらゆる印刷会社へ印刷製造サービスを提供することです。中には、高級ブランドや一流メーカーの商品カタログといった、それぞれ独自の基準や要望を満たすことを求められる仕事もあります。ただ、私たちはそれらだけにフォーカスしているわけではなく、あくまで「印刷製造サービス」が主軸。お客さまに合った、最適な製造サービスを提供できることが大切です。

つまり、多くのお客さまの要望を迅速に満たすような、ラクスルが求める印刷に適した製造方法があるならば、他の企業よりも、より良く、より安く、より早く、“QCD(Quality、Cost、Delivery)”を徹底して提供するだけ。だからこそ、こだわり重視で重厚な高級ブランドの仕事と、短納期でコストパフォーマンスに優れるラクスルの仕事を同時に取り扱うことに関しては、私たちは違和感がないわけです。ただ、なぜそこで「違和感」という言葉が出てくるかというと、それは印刷業界が抱えている不合理にぶち当たるからです。

「いくらお金がかかってもいいから、丁寧に作ってほしい」というお客さまがいれば、「色や見当はある程度しっかりした上で、早く安く作ってすぐに配りたい」というお客さまもいある。世の中のニーズは数あれど、これまでの印刷会社は一様な印刷を求めてしまっていたのだと思います。その状態を、私たちは変革したい。色の標準濃度など、世界の「当たり前」を日本の現場でも同様に浸透させていく。つまり、印刷をしっかりと工業製品にするということです。

──最後にラクスルパートナーズへ参加を検討している方へのメッセージをお願いします。

福田(浩):我が社としては美術的な印刷とラクスルの印刷を同時に取り組むことには違和感がなくても、現場のオペレーターはそうはいきません。自動車カタログのあとに、ラクスルの印刷物に向き合い、また自動車カタログに戻る……というのは、ほぼ不可能に近いほど難度が高い。おそらくは、カタログの基準に引っ張られてしまうでしょう。

ラクスルと協業するのであれば、オペレーターを含めた専用ラインを作らない限り、このビジネスはうまくいかないはずです。先ほども話したように、求められる仕事がちがう。その覚悟をもって臨まなければ、ラクスルも不幸になるし、あなたの会社も不幸になってしまうかもしれません。

世界には、OEE(設備総合効率)が70%を超える印刷会社もあります。日本の平均値は20%以下です。私は現地視察でそれを目の当たりにして、「印刷業は仕事の仕組みとやり方を変えれば、まだまだ成長の余地はあるのだ」と考えさせられました。ラクスルとの提携は、その成長につながる一歩でもあるはずです。

会社情報

会社名株式会社スマートグラフィックス
創業2019年11月
担当商品チラシ、折りパンフレット
ラクスル業務生産設備・オフセット枚葉印刷機8色UV1台
・断裁機2台
・折機1台
・シュリンク包装機1台
ラクスル業務生産体制シフト3直2交代、土日稼働